何でいつもそこにいるんだ?インザーギ!

  • 2010.11.07
By Black and Blue

2010年11月5日 読売新聞朝刊23頁より引用


今までいろいろなストライカーを見てきた。ロマーリオやロナウド、バティストゥータ、ファンバステン等々。どの選手も華麗なテクニックでゴールを決めてきた選手ばかりで、サッカーにさほど関心の無い人でも彼らの映像を一目見れば綺麗な、そして美しいゴールだと思う人が多いのではないだろうか。現役選手で挙げてもドログバ、エトゥー、メッシなどのゴール場面には思わずハッとして見てしまうが、本日掲載したインザーギはその対極に位置する選手で、サッカーに精通していないとその凄さがまるで理解されない選手と言っていいだろう。というのもユベントス時代からインザーギのプレイは見ているが、フェイントで相手を交わす場面も見たことが無いし、パスを出して人を使うなんて事は全くやらない。それにドリブルが出来ないから相手を抜くことも出来ない。そもそもサッカー選手としての技術は前述のスーパースター達と比較すると完全に見劣りするのだ。

ではなぜ37歳にもなりながら、未だACミランで背番号9を付けていられるのか?それは世界で唯一彼だけが持っている優れた能力、すなわちボールが来る場所を予知する能力があるとしか思えないほど、ポジション取りに長けていることが挙げられるのだ。彼のプレイスタイルは決まっている。常にゴール前に陣取り、相手守備陣より先に瞬間的に足を差し出し、ボールに触れてゴールするか、オフサイドポジションぎりぎりの場所に張りながら守備陣よりほんの少しだけ早く足を踏み出し、先に出てゴールしてしまうか、そのどちらかだ。だから全部が全部インザーギのゴール場面を見ているわけでもないが、技術で相手を振り切って華麗なゴールを決めた印象はあまり無い。

ジョン・カビラが『何でいつもそこにいるんだ?インザーギ!』と連呼するのが一番当を得た表現のように思うが、89分間は何もしていなくても残り1分で仕事をしてしまう、その精神力の強さは大したものだろう。特に大舞台に強く、ラウールと並んで欧州カップ戦歴代最多得点者になっている点はお見事の一言。それにしても読売スポーツ欄でインザーギがサッカー面のトップになるとは驚き以外の何物でもない。メッシらスーパースターと比較すると知名度では完全に負けるだけに、ひょっとしたら読売新聞記者の好みかと思ったが、考えたら日本のFWに一番必要なのがインザーギのようなタイプのFWで、インザーギには失礼だが、世界トップレベルのFWで日本人が一番最初に追い付けそうなタイプのFWのような気がする。メッシやクリスティアーノ・ロナウドなどのレベルは無理にしてもインザーギタイプのFWが1人でいいから早く出現してくれないものだろうか?

●インザーギ、欧州70ゴールに到達

●フィリッポ・インザーギ(Wikipedia)

ファビオ・カンナヴァーロは自身が作成した優秀なフォワードベスト3にインザーギを挙げ、理由については「抜群に鼻(得点感覚)が利くからさ。ACミランというビッグクラブで長年にわたって得点を量産することは並大抵のことではない…。脱帽だよ」と語っている。
マンチェスター・ユナイテッドFC監督のアレックス・ファーガソンは、オフサイドラインを上手く突破するインザーギについて「オフサイドポジションで生まれた男」とコメントしている。またヨハン・クライフは「彼はサッカーをまったくしていない。ただ常に的を得た場所にいるだけだ」、ゲルト・ミュラーは「彼がしている事の全てはゴールを決めることだ」とのコメントを残している。

Pippo Inzaghi!!!!