クラシコ・バルセロナ対レアルマドリード戦を見て

  • 2010.12.05
By Black and Blue

ゲームセンターでモグラ叩きゲームをやっていると、終盤にはもう至る所からモグラが出てきて収拾不能になることがある。左上から出てきたと思ったら、今度は右下、そして次は右上から二連発。叩けども叩けども追いつかず最後には疲れ果ててしまうのだが、11月29日に行われたバルセロナ対レアルマドリッドの試合で、レアルマドリードの選手はまさにそのような徒労感を感じたのではないだろうか?セカンドボールは殆ど完全に拾われ、引いては押し寄せ、引いては押し寄せる巨大な津波を相手にしているかのような圧迫感を90分間続けられてはたまったものではないだろう。

WOWOW試合後のデータ画面ではボール支配率バルセロナ67に対しレアルマドリードは33。今シーズン無敗のレアルマドリードが敵地カンプノウに乗り込んで、永遠のライバルであるバルセロナと雌雄を決する首位争いだけに注目度は抜群だ。このところクラシコはバルセロナが完全にレアルマドリード凌駕していることもあり、しかも場所はカンプノウ。多くの人は1対0、または2対1でバルセロナが勝利するだろう、だが、レアルマドリードの監督は昨年度インテルを率いてチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたモウリーニョ。インテル監督時には徹底した守備戦術でバルセロナを破っているだけに今回も一波乱あったとしてもおかしくない。果たして結果はどうなるのだろうかというのが衆目の一致した見方だったのだが、蓋を開けてみると5対0と完膚無きまでに叩きのめされいる。

両チームの得点差がそのまま実力差につながるわけでもなく、客観的な目で見ればバルセロナとレアルマドリードの実力差はほんの僅かながらもバルセロナ優位だろう。その僅かの差を名将モウリーニョがどのように埋めていくのかが最大の見所だったのだが、結果から言えば得点場面につながったイニエスタからシャビへのスルーパスが全てだったような気がする。

1点目。メッシからパスを受けたイニエスタは左側にいるアビダルにパスを出し、そしてセンタリングを上げる。あの場面を見ていた多くの人はそのような展開を想像したはずだが、イニエスタはそれを選択しなかった。イニエスタとシャビだけの間で通じるアイコンタクトがもたらした微かに生じた針の穴、コンマ何秒のタイミングで早くてもまた遅くても閉じてしまうかもしれないその針の穴に向かって、まるでシュートのようなパスを繰り出したのだ。守備の下手なマルセロで無かったとしても、あのタイミングであそこに出されたら慌てふためくことだろう。試合開始直後、おそらく10分前後で挙げたシャビの得点で試合に流れは一気にバルセロナに傾き、その後のビジャがセルヒオラモスを振り切ってセンタリングを通した時点で、レアルマドリードの守備陣はほぼ完全に崩壊してしまった。

バルセロナの選手全員のパフォーマンスがベストの状態で、たまたまレアルマドリードの選手のプレイが低調だったという見方ももちろん出来るが、レアルマドリードの選手のやる気をそいだイニエスタの匕首(あいくち)を喉元に突きつけたかのようスルーパスは圧巻だった。そして後半ともなるとメッシの独壇場になる。得点こそ上げることは出来なかったが、得意の緩急自在のドリブル変化でレアル守備陣を翻弄し、そしてビジャへのお膳立てと、まさに異次元プレイの連続で見ている者を興奮のるつぼへと誘う。クラシコという大一番で比類のないほど美しいサッカーを見せたバルセロナは何度も書いているように、まさに彗星周期のチームだろう。その根幹をなすのはメッシ・シャビ・イニエスタの三人で、トッティやロナウドの言葉も素直にうなずける。

●ローマのトッティ「このバルセロナは史上最強のチームだ。リーグ優勝するだろう」
バルセロナの選手たちは、まるで“破壊者”だった。レアル・マドリーのように走り回ることなく、ボールを回していた。カンプ・ノウ(バルセロナの本拠地)で、僕はスペクタクルなサッカーを目にしたが、まさに世界一美しい試合の1つだった。このバルセロナは史上最強のチームだ。

●元ブラジル代表のロナウド「バルセロナは世界最高のチームだ」
元ブラジル代表FWロナウドが自身のツイッターでバルセロナを絶賛した。ロナウドは、11月29日に行われた“エル・クラシコ”でレアル・マドリーを5-0で粉砕したバルセロナについて「現時点では世界最高のチームだ」とつぶやいた。


このような展開になればリズムを変える選手、例えばミランのインザーギのようなFWが欲しいところだが、クリスティアーノ・ロナウド、ベンゼマ、ディマリア、エジルの布陣は組織として機能しておらず、カカがもし居ればと思ってしまう。が、いずれにしてもボール支配率33%は衝撃的な結果だろう。現時点では紛れもなくバルセロナのパスサッカーが、チャンピオンズリーグ常連のビッグクラブを凌駕しているが、だからと言って必ずしも勝てる、優勝できるとは限らないのだ。次週チャンピオンズリーグのグループリーグ最終戦が行われるが、その後の組み分けの抽選が非常に面白くなってきた。

●現地メディアが報じたエル・クラシコの衝撃 バルセロナの歓喜とマドリーの屈辱