三井住友銀行本店の幾重にも積み重ねられた文字

  • 2011.09.28
By Black and Blue




昨今、都心一等地のオフィスビルの外装と言えばオールガラス張りの建物が殆どだが、その中にあって、高さ方向に幾重にも積み重ねられた割肌石とガラスとの対比が遠目に見ても斬新に感じられ一際目に付く三井住友銀行本店。中でも度肝を抜かれたのが正面入り口右側の銀行名称文字で、よくまあこれだけのものを作ったものだと感心してしまった。同種の文字は銀座や表参道には存在しないために、都内ではおそらくここ三井住友銀行本店だけだろう。

一枚あたりのステンレス文字の厚さを5ミリと計算すると、それを25枚前後積み重ねて製作されており、これだけの厚みを持たせた金属文字をどうやって止めているのかが即座には推理しにくいが、それにしてもこの製作方法は驚嘆ものだ。なにゆえにこれだけ積み重ねる必要があったのだろうと理解するにはその建物のコンセプトを調べることが第一だが、ネットを探し回って見つけた小冊子にその答えが掲載されていた。以下、日本ビルヂング経営センター発行のいしずえNo.143の7頁および8頁から引用する。

外装デザインは、丸の内・大手町エリアの格調高い歴史的街並みにふさわしい「風格」と「伝統」を感じさせるデザインが求められました。一方当社としてはそれにとどまらず、入居される企業が益々発展していくことを象徴するような「先進性」を併せ持ったデザインである必要があると考え、その二つを兼ね備えたデザインを求めて複数の設計会社にデザイン提案をお願いしました。

その結果採用された外装計画は、近年のオフィスビルには珍しく割肌の石を多用し、割肌と磨きの対比を現代彫刻のように用いて陰影と深みのあるファサードや外装イメージを構成する上に、更に金属やガラスの持つ現代的でシャープなイメージを組合せ、この二つの要素が徐々に移り変わったり、入り組んだりすることによって「先進性」と「風格」を調和させるという斬新なものになりました。

上記の文章は外装デザインについて記されたものだが、それはこの幾重にも積み重ねられた銀行名称文字についてもそのままそっくり当てはまる。まさに風格・伝統・先進性を兼ね備えた重厚感に満ちあふれる仕上がりだと思う。


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