長友佑都選手のインテル移籍

  • 2011.02.05
By Black and Blue

去年ワールドカップの日本代表の試合を見て一番印象に残った選手は長友佑都選手だった。大活躍した本田圭佑選手は確かにキープ力はあるかもしれないが、スピード感がさほど感じられず、正直じれったい。それに対し長友選手は決して物怖じしない勇猛果敢なプレイで相手陣営に切り込むことが何度かあり、日本代表のサイドバックもついにここまで成長してくれたのかと感慨深かったのを覚えている。そしてセリエAの下位チームであるチェゼーナに移籍したと聞き、順調に育ってくれればと思っていたらインテルに引き抜かれたので正直驚いてしまった。

欧州南米サッカーファンの方以外にはあまり分かりにくいだろうが、欧州サッカーにはビッグクラブと呼ばれる、他のクラブとは完全に格が異なるクラブが存在する。その格差は日本のプロ野球など比較対象にならないほど歴然としており、その一握りのビッグクラブが欧州サッカー全体を支配していると言っても過言ではないだろう。ちなみにWikipediaの"G-14"項目にビッグクラブの詳細が書かれているが、Wikipediaに掲載されている18チームがビッグクラブかと問われると、正直YESとは言い難い。18チームの近年の成績を見ていると、これは違うだろうと思わざるを得ないチームもいくつかあるからだ。個人的には世界最高峰のサッカー大会である欧州チャンピオンズリーグの成績とG-14、そして近年の各国リーグ戦成績を加味した主観で決めても構わないと思うのだが、その考えからいくとビッグクラブは以下のようになる。


スペイン・・・・・バルセロナ・レアルマドリード
イングランド・・・・・マンチェスターユナイテッド・チェルシー・アーセナル・リバプール
イタリア・・・・・ACミラン・インテル・ユベントス
ドイツ・・・・・バイエルンミュンヘン

蛇足ながら世界最高峰のサッカー大会はワールドカップと勘違いしている人が数多く見受けられるが、国別の最高峰の戦いはワールドカップであっても、組織的に最高水準の戦いはワールドカップではない。近年の英国チェルシー、昨年のインテル、そしてスペイン・バルセロナを見ても分かるように、年間を通して熟成された完成度の高いチームが見られる欧州チャンピオンズリーグこそが現時点では世界最高峰のサッカー大会だろう。

さてカルチョ・スキャンダル以降のユベントスとここ最近のリバプールの成績を見ていると、ビッグクラブと呼ぶには少々物足りない点もあるが、両チームの歴史を鑑み、おおよそ上記10チームがビッグクラブと言ってもいいのではないか。この中で完全に異次元のサッカーチーム、当ブログでは彗星周期のチームと表現したが、それがバルセロナ。その後塵を拝しているのが、レアルマドリード・マンチェスターユナイテッド・チェルシー・アーセナル・ACミラン・インテル・バイエルンミュンヘン、数馬身離されて、ないしは周回遅れでリバプール、ユベントスと言ったところだろう。

従ってチェゼーナからインテルへの引き抜きはまさに大抜擢、逆に言えばインテルの将来を背負って立つとまで言われたダビデ・サントンのあまりの不甲斐なさからくる見せしめと言えなくもないが、そこにはレオナルド監督の意向が大いに働いているはずだ。

●“ザック監督の教え子”レオ様が長友を絶賛「すばらしかった」

この記事を読んでもレオナルド監督が長友選手を高く評価しているのが良く分かるが、今期は開幕当初からごたごた続きのインテルだけにリーグ戦とチャンピオンズリーグの結果次第では再び大荒れになる可能性も否定出来ない。ちなみにレオナルド監督の契約期間は2012年6月まで。なのでレンタル移籍である長友選手の場合、良き理解者であるレオナルド監督が居るうちに早期に結果を出すことが必要だろう。ロナウジーニョのACミラン退団を見ても分かるように、後ろ盾・良き理解者がいるうちはビッグクラブに在籍することが出来ても、居なくなった途端に放出という出来事は欧州サッカーでは日常茶飯事だからだ。

ワールドカップの数試合を見ただけで、チェゼーナ戦もアジアカップも一切見ていないので正式な評価は控えたいが、運動量は確かに特筆すべきものがある。が、技術面では正直それほどのものは感じなかった。インテルのサイドバックはサネッティ、マイコン、キヴとそうそうたる面々が居るだけに、数少ないチャンスをものに出来るかどうかが長友佑都選手の運命の分かれ目となる。シーズン閉幕となる5月末まであとわずか。前述のビッグクラブに所属した初めての日本人選手として活躍して欲しいものだが、長友選手のプレイだけを追っているようでは森の中の葉っぱを見ているようなものだろう。新聞・雑誌・テレビ等のマスコミはこれを機会に欧州サッカーチームを大所高所の見地から日本人に紹介して欲しいものだと常々思っている。